不眠症とは寝付きが悪かったり朝早く目覚めたりなどの症状が出ることにより、日中に眠気や疲労、注意力の散漫などを生じる状態のことです。
誰でも「寝ようとしているのにどうしても寝られない」という体験をしたことがあるかと思います。次の日に大事な予定があったり、楽しみなイベントがあったりすると、不眠症でない方でも眠れなくなることはあるものです。
しかし通常は、一時的に眠れなくなるだけで数日から数週間もすればまたいつも通り眠れるようになります。一方で不眠症の場合は、不眠の症状が慢性的に続く点が大きな違いです。症状が3か月以上続く場合は慢性不眠症、3か月未満の場合は短期不眠症と診断されます。
日本では、約5人に1人が不眠症です。男女比を見ると、男性よりも女性で多いと言われています。不眠症を発症しやすい年齢は20~30歳代です。年齢が上がるにつれて患者数は増加していきます。
不眠症の原因は人それぞれです。ストレスや心の病気、薬の副作用や生活リズムの乱れなど、いろいろな要因によって不眠症は起こります。不眠の症状が続いていると感じたら、早めに治療を開始することが大切です。
長い間不眠の状態が続くと、眠れないことに恐怖を感じて余計に眠れなくなったり、睡眠状態に強いこだわりをもつことで症状が悪化したりする可能性があります。
不眠症にはタイプが4つあり、タイプによって症状が異なります。
寝ようと思ってもなかなか寝付けないものを入眠困難と言います。ベッドに入って30分~1時間以上経っても、眠気を感じず眠ることができません。何時間か経っても眠れないこともあります。どれだけ時間が過ぎても寝付けないため、睡眠時間が短くなって疲れが取れず、翌日に倦怠感に悩まされることも多いでしょう。
中途覚醒とは、眠りについたものの途中で目が覚めてしまうことです。起床するまでの間に何度も目が覚めてしまうため、熟睡した実感を得られず疲れが残ってしまいます。一度目が覚めるとなかなか再入眠できない方もおり、睡眠の質に大きな影響を与える症状です。
起きようと思っている時間より2時間以上前に目が覚めてしまう症状を早朝覚醒と言います。とくに高齢者でよく見られる症状です。目が覚めてしまうと、再入眠できません。
熟眠障害とは、寝付きもよく中途覚醒することはないものの、睡眠時間をしっかり取っても熟睡した感じが得られない症状のことです。寝ても寝てもぐっすり寝た感じがしないため、疲労がたまりやすくなります。
不眠症の原因は人それぞれです。ここでは、おもな5つの原因を紹介します。
生活習慣や眠るときの環境が睡眠に影響を及ぼします。夜勤で睡眠サイクルが乱れたり、寝室が明るすぎたりすると、うまく眠ることができません。
不安なこと、心配なことがあると寝付けなくなります。翌日に楽しいイベントがあり、楽しみで眠れなくなることもあるでしょう。
薬の影響で不眠症になることもあります。また、アルコールやカフェインの摂りすぎもよくありません。
咳やかゆみ、頻尿などによって睡眠が妨害されることがあります。
うつ病や統合失調症など、精神的な病気も不眠症を引き起こす原因です。まずは原因となる病気の治療を行う必要があります。
不眠症の治療には、おもに「薬物療法」と「非薬物療法」とがあります。
薬物療法では、薬を使って不眠症の症状を改善していきます。早朝覚醒に悩んでいるのか早朝覚醒に悩んでいるのかなど、症状に合わせて薬を選ぶことが基本です。
不眠症そのものを治す薬はありませんが、症状が改善することで不眠症への恐怖が減少し、不眠症の治療にもつながります。人によってどの薬が合うのかが異なるため、医師と相談して自分に最適な薬を見つけることが大切です。
非薬物療法では、薬を使わずに生活習慣の改善を行うことで不眠症の治療をしていきます。根本的に不眠症を改善するためにも、非薬物療法はとても重要なものです。睡眠の質を高めるためには、次のポイントを押さえた生活を送るようにしましょう。
不眠症になる原因は人それぞれ異なります。夜勤があるため睡眠サイクルが崩れてしまう方、精神的な要因で寝付けない方などさまざまです。不眠症は適切な治療を行ったり生活習慣を見直したりすることで改善できます。
しかし、治療を受けるために医療機関に足を運ぶことが難しい方もいるでしょう。治療したいのにできない、そのような方は在宅医療を検討してみてはいかがでしょうか。
本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。