睡眠障害とは、「眠れない」「途中で目が覚めてしまう」「寝すぎて困っている」など、睡眠に関してなんらかの問題が出ている状態のことです。睡眠障害と聞くと不眠症を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、眠れないだけでなく逆に寝すぎてしまったり、日中に強い眠気が来て自分でも気がつかないうちに寝てしまったりなど、さまざまな症状があります。
睡眠は体を休めて体力を回復するだけでなく、記憶を定着させたり免疫機能を調節したりなどさまざまな働きがあるため、質の良い睡眠をしっかり取ることが大切です。睡眠障害が現れると、日中に眠くなって事故を起こすこともあるため、適切な治療を早めに開始する必要があります。
睡眠には、ノンレム睡眠とレム睡眠とがあります。ノンレム睡眠は深い睡眠のことです。睡眠の深度によって4つのステージにわけられます。ステージによって脳波のパターンが異なることが特徴です。
レム睡眠は、急速眼球運動と骨格筋活動の低下が起こっており、夢をよく見ることで知られています。ノンレム睡眠とレム睡眠は、約90分の間隔で繰り返すことが一般的です。通常は睡眠の前半に深い眠りが訪れ、起きる時間が近づくにつれてレム睡眠が現れます。
睡眠障害とひとくちで言っても、症状は種類によってさまざまです。
寝付きが悪い、途中で目が覚めてしまう、予定より早く起きてしまう、寝ても熟睡した感じがしないなどの症状が見られます。生活スタイルの変化や不規則な生活、薬の副作用やうつ病などがおもな原因です。
過眠症とは、十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、日中に眠気が出る状態のことです。強い眠気が出るため、学校や仕事などに支障をきたすことがあります。
ナルコレプシーとは、突然強い眠気に襲われて眠り込んでしまう病気のことです。笑ったりびっくりしたりなどの刺激がきっかけとなり、体の力が抜けてしまうこともあります。
あまりに急激に眠気が襲ってくるため、眠ってしまったことに本人が気づけないことも少なくありません。睡眠と覚醒の切り替えを行っているオレキシンを作り出す神経細胞の働きが悪くなることが原因です。
夜に十分な睡眠を取っても日中に強い眠気が続く状態のことです。原因はよく分かっていません。日中に1時間ほどの居眠りをすることが多いのですが、居眠りをした後にすっきりした感じがないことが特徴です。
眠気が出やすい薬として、抗ヒスタミン薬や抗不安薬、抗うつ薬などが代表的です。これらの薬の副作用で日中にうとうとしてしまう方もいます。
体内時計が狂うことで、夜に十分な睡眠を取れなくなる状態のことです。夜勤や夜更かしによって睡眠サイクルが後ろにずれることが原因で起こります。
睡眠時に呼吸が停止したり低呼吸になったりし、熟睡感を得られなくなる症状です。代表的なものに睡眠時無呼吸症候群があります。睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気のことです。
眠りの質が悪くなるだけでなく、血中の酸素が不足して脳や血管に負担を与えてしまうこともあります。
寝ようとしたときに足がむずむずと不快な感じになるレストレスレッグス症候群や、睡眠中に手足が無意識にピクピク動いたりする周期性四肢運動障害などが知られています。
レストレスレッグス症候群は足を動かすと症状が軽減しますが、安静状態になると症状が再び現れるため、眠くても眠りにつくことができません。
周期性四肢運動障害は手足が無意識に動くため深い睡眠を得にくくなり、中途覚醒が増えてしまいます。症状がひどくなると日中に眠気を感じたり倦怠感が強く出たりすることもあるでしょう。
睡眠時随伴症とは、睡眠中に起こる夜尿や歯ぎしり、悪夢、寝言などのことです。寝た状態のまま歩き回る夢遊病や、睡眠中に突然怯えたように叫んだり泣いたりする夜驚症なども含まれています。
高齢者では、レム睡眠行動障害が見られることもあります。レム睡眠中に見ている夢の内容と一致する異常行動をしたり寝言を言ったりするのがレム睡眠行動障害です。近くで寝ている方に危害を加えてしまうこともあります。レビー小体型認知症やパーキンソン病などの前駆症状として見られることもあるため、注意が必要です。
睡眠障害がある場合は、原因に応じて治療を行うことが前提です。まずは生活習慣を整えるように心がけましょう。起床時間と就寝時間をできるだけ一定にし、朝起きたら太陽の光を浴びるようにします。寝付きを良くするために、日中に体を動かすのも効果的です。寝る前にアルコールやカフェインを摂ると睡眠の妨げとなるので控えましょう。生活習慣を見直しても症状が改善しない場合は、薬物治療も対象となります。症状によって適切な薬を使うことが大切です。
睡眠障害を治したいけど、医療機関の受診が難しい。そのように感じている方もいるのではないでしょうか。過眠症やナルコレプシーがある方は、通院中に眠気に襲われてしまう可能性もあります。「治療したいけど通院するのに抵抗がある」という方には、在宅医療がおすすめです。医療機関まで足を運ぶことなく自宅にいながら必要な医療を受けられます。
本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。