医療法人社団 心清会
精神科・心療内科・内科・訪問診療

統合失調症

統合失調症とは

統合失調症とは、幻覚や幻視などの症状が見られる精神疾患のことです。考えや気持ちがまとまらなくなる(=統合できなくなる)ことで、さまざまな症状が見られます。

統合失調症が起こる原因については、まだはっきりとは分かっていません。一説によると、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで発症すると考えられています。

このほか、遺伝や環境要因が原因だと考える説も有力です。通常、統合失調症を発症する確率は1%程度だと言われています。しかし、親や兄弟に統合失調症がある方がいるケースでは、発症率が約10%にまで上がるのです。

また、もともと統合失調症のリスクをもつ方がストレスを受けやすい環境で生活することでも発症しやすくなると言われています。統合失調症では幻覚や幻視などの症状が見られますが、それを病気のせいだと認識できていない方も珍しくありません。病気であることに気が付かず、治療が遅れてしまう方もいます。

統合失調症の症状

統合失調症の症状は、大きく「陽性症状」と「陰性症状」、「認知機能障害」の3つにわけられます。現れる症状は人それぞれです。

〈陽性症状〉

陽性症状とは、あるはずのないものが見えたり聞こえたりする症状のことです。統合失調症の患者では、とくに幻聴が見られることが多くあります。本来は聞こえるはずのない声が聞こえるのです。「◯◯をしろ」という命令や自分の悪口が聞こえてきます。幻聴のために友人や家族との関係が壊れてしまうこともあります。

このほか、実際にはないものが見える幻視、ないはずのにおいを感じる幻嗅などの症状も代表的です。いずれも本来はないはずのものですが、本人にとっては幻聴や幻視、幻嗅のすべてが現実であるため、周りから理解してもらえずつらい思いをすることになります。

現実にはありえないことを事実だと思い込んだり、極度に興奮して奇妙な行動を取ったりするなども代表的な症状です。

〈陰性症状〉

陰性症状では、感情の平板化(喜怒哀楽の感情が起こりにくくなること)や意欲の減退、集中力の低下などが見られます。感情が鈍くなったり起伏が乏しくなったりするため、うまく感情表現ができません。そのため、何に対しても興味がないように見られることがあります。意欲の減退によりやるべきことができなくなってしまうことも多いです。

仕事や家事に手がつかなくなったり、入浴や着替えなどができなくなったりもします。集中力が低下するので、何をしても長続きしません。複数のタスクをこなすことが苦手になり、効率良く動けなくなります。

人と関わるのを億劫に感じ、引きこもりになってしまう方も見られます。陰性症状は、一見するとただなまけていると取られることが少なくありません。そのため、周りもご自身も病気であることを認識することがまずは大切です。

〈認知機能障害〉

統合失調症では、認知機能障害が見られることもあります。記憶力が低下するため、新しいことを覚えることがあまりできません。一時的に記憶を保持するワーキングメモリーの能力も下がることから、今から何をしようとしていたのか分からなくなったり、会話の内容がまったく頭に入らなくなったりします。

注意力も低下するため、落ち着きがなくなったようになることも多いでしょう。一つのことに集中できなくなり、周りの音や動きに気を取られてしまうのです。このほか、計画を立てて物事を進めたり整理整頓ができなくなったりなどの症状も見られます。

統合失調症の治療

統合失調症の治療法には、おもに「薬物療法」と「心理社会的療法」の2つがあります。

〈薬物療法〉

薬物療法では、抗精神病薬と呼ばれる種類の薬を使います。抗精神病薬は、過剰に働いているドーパミンの活動を抑える薬です。抗精神病薬のうち定型抗精神病薬は陽性症状に、非定型抗精神病薬は陰性症状に効果があります。

ほかに、症状に合わせて抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬などを使うこともあるでしょう。薬を飲むのを止めると症状が再発する恐れがあるため、治ったと思っても医師の指示通りに服薬を続けることが大切です。自己判断で薬を飲んだり飲まなかったりすると、治療が長引いてしまう場合があるので注意しましょう。

〈心理社会的療法〉

陽性症状は薬で改善できることが多いのですが、陰性症状や認知機能障害を薬だけで改善するのは難しいとされています。そこで行うのが心理社会的療法です。病気や治療方法について学びを深めたり、体を動かして好きなことやできることを増やしていったりします。

必要な人に、必要な医療を

統合失調症は、周りも自分も病気だと気が付きにくく、治療が遅れてしまうことがあります。自覚症状に乏しく、ご家族や友人が医療機関を受診させようとしても拒まれてしまうこともあるでしょう。

しかし、統合失調症は時間の経過とともに治るものではなく、自然治癒することはまずありません。そのため、適切な治療をきちんと受けることが大切です。どうしても本人が受診を拒む場合や、医療機関を受診するのに勇気がいるという方は、在宅医療を活用してみてはいかがでしょうか。在宅医療なら、外に出ることなく自宅にいながら必要な治療を受けられます。

本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。

医療法人社団心清会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。