医療法人社団 心清会
精神科・心療内科・内科・訪問診療

パニック障害

パニック障害とは

パニック障害とは、突然めまいや息苦しさ、強い不安感などの発作に襲われる精神疾患のことです。「このまま死んでしまうのではないか」というほどの発作に襲われますが、検査をしてもとくに身体的な異常は見つかりません。

発作が起こるタイミングは人それぞれです。電車の中や教室など逃げ場のない場所で起こりやすい方が多いでしょう。一度発作が起きると、「またあの場所に行ったら発作が起こるかもしれない」と不安になり、外出が困難になる方が多くいます。実際に、以前パニック発作を起こした場所に行くと、再び息苦しさや不安感に襲われてしまう方は多いものです。

パニック障害が起こる原因は明確にはされていませんが、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスが乱れることが原因だと考えられています。

セロトニンは精神状態を安定させる働き、ノルアドレナリンは不安や恐怖感を引き起こす働きがある物質です。これらの神経伝達物質のバランスが崩れると、脳が誤作動を起こして突然めまいや息苦しさなどの症状が出るようになります。

パニック障害を抱えている患者さんの割合は約3%です。決して珍しい病気ではなく、誰でも発症する可能性があります。パニック障害が自然治癒することはあまりなく、放置しておくと徐々に症状が悪化してしまうケースがほとんどです。

症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性化してしまうこともあるため、なるべく早めに適切な治療を受けることが大切です。早い段階できちんとした治療を受けられれば、パニック障害を克服して以前と同じような生活を送ることができるようになります。

パニック障害の症状

パニック障害では、おもに次のような症状が見られます。

〈精神的な症状〉

〈身体的な症状〉

このように、パニック障害では身体的には何も問題がないにもかかわらず、さまざまな症状が現れることが特徴です。

発作を起こした場所を恐れ、「また発作が起こるのでは」「今度こそ死んでしまうかもしれない」と不安になってしまう症状は、とくに予期不安と呼ばれています。予期不安は、多くの患者さんが抱えやすい症状の一つです。

発作を起こした場所を怖いと感じることは、広場恐怖と呼ばれています。広場恐怖の症状が出ると、発作を起こした場所に再び足を運ぶことがなかなかできません。自然と発作が起こりやすい場所を避けるようになり、行動範囲が狭くなって日常生活に支障が出てしまうこともあります。

仕事や学校に行けなくなり、引きこもりになってしまう方も少なくありません。また、パニック障害がきっかけで気分の落ち込みが起き、うつ病になる方もいます。

パニック障害の治療

パニック障害の治療は、薬物療法と行動療法を組み合わせて行うことが一般的です。

〈薬物療法〉

薬物療法では、抗不安薬や抗うつ薬などを使って症状を改善します。抗不安薬は神経細胞が過剰に興奮するのを抑える薬です。不安感や身体症状を抑える効果が比較的早く出ることから、症状が強いときの頓服薬としても用いられます。いくつか種類があるため、症状の程度や生活スタイルなどに合わせて服用することが大切です。

抗うつ薬にも種類が多くありますが、パニック障害ではSSRIと呼ばれるものがよく使われます。SSRIは、セロトニンの濃度を上げる働きがある薬です。セロトニンには気分を落ち着かせたりリラックス感を与えたりする効果があるため、パニック障害の症状を落ち着かせることができます。

〈行動療法〉

パニック障害は、薬で症状を抑えるだけでなく日常生活を送れるように心のバランスを整えていく必要があります。そのために行うのが、行動療法です。

行動療法では、あえて発作が起きやすい場所に行くことで、「この場所に行っても発作が出ない」という経験を少しずつ積んでいき、予期不安や広場恐怖などの症状を改善していきます。

「まずは1駅だけ電車に乗ってみる」「数分だけ外に出てみる」などからチャレンジしていき、次第に乗る駅数や外出する時間を増やすことで心を慣らしていく治療です。無理に発作が起きやすい場所に行くと症状の悪化を招くことがあるため、無理のない範囲で少しずつ進めていきます。

パニック障害の方が日常生活で気をつけたいこと

パニック障害は、治るまで時間がかかることもあるため、「このまま治らないかもしれない」と不安に思ってしまうかもしれません。しかし、適切な治療を行えばパニック障害は治ります。毎日を少しでも負担なく過ごして治りを早くするためには、次のポイントを押さえることが大切です。

薬を処方された場合は、用法用量をきちんと守って服用しましょう。自己判断で服用を止めると、症状の悪化を招くことがあります。ストレスや疲労は発作の誘発につながるので溜め込まないように気をつけてください。睡眠リズムがバラバラになると、自律神経の働きが乱れて発作が起きやすくなります。できるだけ起床時間と就寝時間が同じになるように過ごしましょう。

必要な人に、必要な医療を

パニック障害になると、どうしても外出するのが難しくなってしまうことがあります。医療機関を受診するのすら困難になるケースもあるでしょう。どうしても外出が難しい場合は、在宅医療を検討してみてはいかがでしょうか。

本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。

医療法人社団心清会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。