適応障害とは、自分が置かれている環境にうまく対応できず、日常生活に支障が出ている状態のことです。転勤や引っ越し、仕事などがストレスの原因となり、ある特定の状況や出来事に対して強い苦痛を感じるようになります。
抑うつ気分になったり緊張しやすくなったりすることで仕事ができなくなり、周りから「サボっている」「甘えている」などと思われることが少なくありません。
適応障害は生活環境が変わると誰にでも起こりうる病気で、日本人の5~20%の方で発症する可能性があると言われています。
世界保健機構の診断ガイドライン(ICD-10)では、「原因となるストレスを生じてから1か月以内に発症し、ストレスが解消すると6か月以内に症状が改善する」とされているため、基本的にはストレスを解消することで症状の改善が可能です。
適応障害は、強いストレスを受けることによって発症します。多くの方が日々ストレスを受けながら生活していますが、ストレスをうまく受け止めて解消することが苦手な方は適応障害を発症しやすいのです。よくあるストレスの原因としては、次のものが挙げられます。
今までと状況が大きく変わったときや、強いストレスを受けたりしたときに発症しやすいことが特徴です。
早期にストレスを取り除ければ症状も落ち着きやすいのですが、ストレスがかかる環境で我慢して過ごしていると重症化することもあるので注意しましょう。時には適応障害によってうつ病を引き起こすこともあります。そのため、早めに対処を行うことが重要です。
適応障害の症状は、大きく「精神的な症状」「身体的な症状」「行動的な症状」の3つにわけられます。
適応障害では、このようにさまざまな症状が見られます。しかし、「この症状が見られたら確実に適応障害です」と言えるような症状が特別にあるわけではありません。適応障害によって現れる症状は人それぞれです。食欲が低下する方もいれば、逆に過食気味になる方もいます。
適応障害によって現れる症状は、うつ病や統合失調症でも見られるものが少なくありません。そのため、ほかの精神疾患の可能性がないかしっかり判別することが大切です。
適応障害の場合は、ストレスから離れると症状が改善されるという特徴があります。どのような症状があるかを見ることも大切ですが、症状にストレスが関与しているかどうかを確認することも同様に大切です。
適応障害は、おもに「薬物療法」や「カウンセリング」、「ストレスの除去」によって治療を行っていきます。
薬物療法は、適応障害によって現れている症状を薬で改善する治療です。適応障害そのものを治療するものではありませんが、薬を使うことでつらい症状を抑えることができます。
不眠の方には睡眠薬、不安感が強い方には抗不安薬、イライラしやすい方には気分安定薬のように、症状に応じて薬を使い分けることが基本です。薬を使うことで、症状を楽にできるでしょう。
しかし、根本的に適応障害を治すものではないため、カウンセリングやストレスの除去などもあわせて行うことが重要です。薬物療法はあくまでも補助的に行われます。
適応障害を治療するためには、ストレスへの適応力を高めることが大切です。カウンセリングは、適応力を高めるために行います。よく行われるのが認知行動療法です。
人によってものの捉え方や受け取り方は異なります。同じストレスを受けても何も気にしない方もいれば、落ち込んでしまう方もいるのです。認知行動療法では、捉え方や受け取り方を見直すことで、考え方を見直してストレスを受けづらい状況にしていきます。
適応障害はストレスがおもな原因となるため、ストレスを除去することがとても大切です。そのためにも、環境の調整を行いましょう。まずは自分が何によってストレスを受けているのかを自覚します。ストレスの原因が分かったら、改善できそうな点を探して環境を変えていきましょう。
一緒にいることがつらいと感じる家族や恋人とは距離を置く、仕事がつらい場合は休職するなど、できることを行います。しかし、ストレスの原因が分かったとしても、すべてのストレスを生活から除去するのは難しいものです。そのため、カウンセリングや薬物療法なども併用しながら治療を進めていくことになります。
適応障害になった場合、人によっては外に出るのが難しくなることもあるでしょう。治療をしたいのに医療機関の受診が難しいと感じている方もいるのではないでしょうか。そのような方は、ぜひ在宅医療の利用を検討してみてください。在宅医療では、患者さんの自宅を医師が訪れて診察を行ってくれるため、外に出ることなく治療を行えます。
本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。