医療法人社団 心清会
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引きこもり

引きこもりとは

引きこもりとは、さまざまな理由により家庭にとどまり続けている状態のことです。厚生労働省は、「様々な要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)」と定義しています。

引きこもりと聞くと、まったく自宅から出ない様子を想像される方もいるかもしれません。しかし、誰とも関わらず一人で外出をする方でも、家庭に6か月以上とどまり続けている場合は引きこもりとなります。

内閣府が行った調査では、15~39歳で引きこもりになっている方は54.1万人、40~64歳では61.3万人と推計されています。若い方が引きこもりになりやすいというイメージがある方も多いかと思いますが、実は年齢を問わず引きこもりの方は存在するのです。

引きこもりの重症度は人によって異なります。軽く外出できる方もいれば、家族と顔を合わせることすらほとんどできない方など、人それぞれです。最近では、引きこもりの高齢化も問題となってきました。それにより、80代の親が50代の子どもの面倒を見る「8050問題」も問題視されています。

引きこもりになる原因

引きこもりになるきっかけは、人によって異なります。ここではおもな原因について9つ見ていきましょう。

〈人間関係〉

人間関係によるストレスが原因で引きこもりになる方は少なくありません。学生時代にいじめに合ったり、自分と合わない性格の上司と仕事を行ったりしていると、人と接することが苦手になり、「誰にも会いたくない」「関わりたくない」と思うようになります。最初は不登校から始まり、次第に引きこもりへと移行していく方もいます。

〈親子関係〉

親と子の関係はなかなか切れるものではありません。そのため、親子関係に悩み、親とできるだけ顔を合わせないようにするために引きこもりになる方もいます。家にいても心を打ち明けられる人が誰もいないため、安らぐことができません。

〈疲労〉

精神的、身体的な疲労の蓄積が限度を超えると、外に出るのが億劫になってしまうことがあります。期待に応えようとするあまり、自分を追い詰めて自ら疲労を溜め込んでしまう方もいるでしょう。頑張りすぎることである日突然、電池が切れたように動けなくなります。

〈いじめ〉

いじめによって「もう学校に行きたくない」「友達と関わりたくない」と考えてしまうのは当然のことです。いじめを受けるのが嫌で引きこもってしまう子どもはよく見られます。また、過去にいじめられていた経験がトラウマとなり、外に出ることが難しくなるケースもあります。

〈失敗経験〉

「もう二度と失敗したくない」「失敗が許されない環境で過ごすのがつらい」という思いから、引きこもりになる方もいます。失敗したときの立ち直り方がよく分からない方は、失敗したときの対処方法がわかりません。そのため、失敗を引きずって引きこもってしまうことが多いのです。

〈不登校〉

不登校が原因で引きこもりに発展することもあります。学生のうちから引きこもりになると、社会に出るきっかけを失うことにつながるため引きこもりが長期化しやすいことが大きな問題点です。

〈ゲーム・インターネット依存〉

ゲームやインターネットに熱中するあまり、外に出なくなるケースもあります。未成年でとくに多いことが特徴です。昼夜が逆転した生活を送っている場合も多く、朝起きられないため学校に行くことができません。

〈病気〉

病気が原因で引きこもりになることもあります。外に出るのを怖いと思ってしまったり、病気の症状によって外出するのが難しくなってしまったりするのです。

〈もともと自宅にいるのが好き〉

引きこもりになる方のなかには、もともと自宅にいるのを好む性格の方もいます。外に出るより自宅にいたほうが快適だと感じ、外に出なくなります。

引きこもりの症状

引きこもりの方では、外出しないという状態のほかに、次のような症状が見られることもあります。

〈昼夜逆転の生活になる〉

外に出ないため生活リズムが乱れ、昼夜逆転の生活になりやすくなります。人の体はもともと体内時計が25時間のため、朝に日光を浴びないとどんどん夜型になってしまうのです。また、昼間は人が多いためあえて活動を避ける方もいます。

〈イライラしやすい〉

ちょっとしたことで怒り、周囲にあたってしまうことがあります。引きこもりになると自分の内側にある感情を出しにくくなったり、ストレスの発散方法がわからなくなったりすることが多いものです。そのため、溜まっているものを周囲にぶつけてしまうことになります。

〈同じ行動を何度も繰り返す〉

引きこもりの方のなかには、強迫性障害を発症している方も珍しくありません。手の汚れが気になって何度も手洗いを行ったり、戸締まりをしたか気になって指から血が出るほど確認行為を繰り返したりする場合は、強迫性障害の可能性があるかもしれません。

引きこもりの治療

引きこもりから脱出するためには、次のような方法を取ることが一般的です。

〈カウンセリングを受ける〉

専門のカウンセラーに相談することで、自分の気持ちを一回しっかりと整理してみましょう。「ひきこもり支援推進事業」というものを国が行っており、各都道府県や指定都市に相談窓口が設置されていますので、こちらを利用してみてください。

〈規則正しい生活を送る〉

昼夜逆転すると日中に外に出ることが難しくなるため、規則正しい生活を心がけましょう。朝起きて日光を浴び、夜になったら夜更かしをせずしっかり睡眠を取ります。

〈薬物療法〉

引きこもりの原因に病気がある場合は、病気の治療をまずは進めていきます。抑うつがある方には抗うつ薬、不眠がある方には睡眠薬、強迫やこだわりがある方にはSSRIなど、症状に応じた薬を使用します。

必要な人に、必要な医療を

引きこもりの当事者が家を出て医療機関を受診するのはかなり難しいものかと思います。そのため、「治療したくてもできない」という方が多いのではないでしょうか。そのような方は、在宅医療の活用を検討してみてください。

本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。

医療法人社団心清会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。