8050問題とは、80代になった親が50代の子どもの世話をしなければいけないという問題のことです。通常であれば高齢になった親の世話を子どもがするのが一般的ですが、これが逆転している家庭が見られます。
8050問題が起こる原因にはいくつかありますが、おもな原因は大人の引きこもりだと言われています。引きこもりといえば、以前は比較的若い年齢層の方で見られていました。しかし、引きこもりが高齢化したことで、高齢の親が50代の子どもの世話をしなければいけない状況が増えてきたのです。
平成30年に行われた内閣府の調査によると、40~64歳で引きこもりになっている方は約61.3万人いると言われています。引きこもりとは、6か月以上にわたって家からほとんど出ず家庭にとどまっている状態のことです。
大人の引きこもりが増えている原因としては、引きこもりの高齢化のほかに収入の減少や精神疾患などが挙げられます。一人暮らしできるほどの十分な収入がないため、親元を離れて暮らすことができません。また、精神疾患があるために就業することが難しく、親に頼らざるを得ない方もいます。
子どもに原因があるケースも多いのですが、親が世間体を気にして引きこもりの子どもを隠しているケースも実は少なくありません。そうなると、子どもは引きこもりを改善するための適切な介入を受けられなくなるため、より一層引きこもりの悪化につながってしまいます。
8050問題がなぜ社会問題とされているのでしょうか。問題視される理由には、おもに次の3つがあります。
8050問題の当事者である子どもの多くは、家事ができません。50代で家事ができないと聞くと驚くかもしれませんが、実際に8050問題を抱える家庭では、80代の親がすべての家事をこなしているケースが多いのです。親がまだ体を動かせるうちは良いですが、要介護状態になればたちまち家庭は崩壊してしまいます。
ご飯を作ることも、掃除機をかけることも、洗濯をすることすら子どもはできません。人生100年時代といえども、80代は十分に高齢です。いつ家庭が崩壊してもおかしくない状況にあるのです。
親の元で何年も何十年も生活してきた影響もあり、親にすべての判断を任せている子どもがよく見られます。子どもの判断能力が劣っているため、親の介護が必要な状況になったとしても、それを受け入れられません。親が老化していることを自覚できず、介護を始めることに否定的になる子どもも多くいます。
そのため、本来は親の介護が必要な状態にあるにもかかわらず、子どもの影響で介護を受けられない方がいるのです。親が心身ともに弱っていることから目をそらし、大きな負担をかけ続けながら生活をしている子どももいます。
80歳にもなると、ほとんどの方は年金生活をしています。子どもはその年金を使って生活をするわけです。親が要介護状態や認知症になってお金の管理ができなくなると、代わりに子どもが管理を行います。
しかし、お金を親の介護費用に当てず、自分のために使い果たしてしまう子どももゼロではありません。また、年金に頼って生活していることが原因で、親が死亡しても死亡届を出さず放置してしまう事故も起きる可能性があります。
引きこもりの高齢化を解決するべく、厚生労働省がいくつか対策を行っています。
引きこもり支援推進事業とは、平成21年度から開始された施策です。引きこもりの相談を受ける「ひきこもり地域支援センター」を都道府県や指定都市に設置し、いつでも相談できる環境を整えました。専門の資格をもつコーディネーターが相談を受けてくれることが特徴です。平成25年には「ひきこもりサポート事業」が設置され、さらなる支援が行われています。
令和4年から、重層的支援体制整備事業が開始されました。これは、市町村が中心となって行っているもので、属性を問わない相談支援や地域づくりに向けた支援などを行うものです。「包括的相談支援事業」や「参加支援事業」、「地域づくり事業」や「アウトリーチ等を通じた継続的支援事業」などを通して、個人にあった支援を届けます。
8050問題が自然に解決することは難しいでしょう。親元を離れて独立しようと努力している子どももいますが、なかなか実現できていないのが現状です。近頃では、次のように引きこもりに対応している相談窓口が増えています。
これらの窓口に相談し、まずは引きこもりを解決するところから動き出しましょう。
8050問題を解決したいと心の中で思っていても、病気のためになかなか自立が難しかったり外に出る勇気が出ず状況が改善しないまま過ごしていたりする方も多いと思います。8050問題が起こる原因にはいろいろとありますが、精神疾患が原因の場合はまずそちらの治療を行いましょう。どうしても外出が難しい場合は、在宅医療を検討してみるのもおすすめです。在宅医療を活用すれば、外に出ることなく自宅で必要な治療を受けられます。
本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。