発達障害とは、脳機能の働きに偏りがあることにより、行動面や情緒面などで特徴が見られる障害のことです。発達障害者支援法では、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。
見た目では分からない障害であることに加えて、本人の性格のせいだと思われて見過ごされることも多いため、正しい治療を受けられずに生きづらさを感じながら生活している方が少なくありません。周りから「自分勝手」「変わった人」と見られ、距離を取られてしまっている方もいるでしょう。
発達障害が起こる原因については、まだ明らかにされていません。現在のところ、先天的に脳の一部に機能障害があることが原因だと考えられています。このほか、胎児期の風疹感染や遺伝子の異常なども影響すると言われていますが、詳しくは分かっていません。
「親の育て方が悪い」「愛情不足な証拠だ」など、心無い言葉をかけてくる方もいますが、育て方や愛情は関係ありませんので安心してください。
発達障害は、どのタイプの発達障害を発症しているのかによって症状が異なります。
自閉症とは、コミュニケーションが苦手だったり強いこだわりが見られたりする状態のことです。言葉の発達の遅れやパターン化した行動なども見られます。急に予定が変わることが得意ではありません。
そのため、予想外の予定が入ると不安でいっぱいになり、体が動かなくなることがあります。ただし、自分がよく知っている場面や慣れた場所でなら活動的に動くことが可能です。
アスペルガー症候群は、広義には自閉症の一つです。とくにコミュニケーション障害や対人関係の障害などが目立ちます。
会話をしていても自分の話ばかりしてしまったり、特定の物事に強いこだわりを見せる一方で興味のないことはなかなか手を付けなかったりなどの症状が代表的です。周りからは「自分勝手」「わがまま」だと思われてしまうことが多いでしょう。
注意欠陥多動性障害では、不注意や多動などの症状が見られます。落ち着きがなく、授業中にじっと座っていることが困難です。
一つの作業に集中し続けることが難しく、中途半端になってしまうことが多くあります。ちょっとしたミスも多く見られるため、周りから注意力がたりない、集中力がないと見られがちです。
知能に遅れがないにもかかわらず、読んだり書いたりすることが苦手な状態のことです。読むのが苦手な状態は識字障害、書くのが苦手な状態は書字障害と呼ばれることもあります。
話を逃さずしっかり聞こうとメモを取っても、メモを取るという行為に集中しすぎるため話の内容がなかなか頭に入ってきません。勉強についていけなくなることも多く、学業に支障が出ることがしばしばあります。
チック症とは、意図せず体が動いたり声が出てしまったりする障害のことです。自分の意思とは関係なくまばたきを繰り返したり、大声を出したりするため、周りから不思議な目で見られてしまうことがあります。
吃音は「どもり」とも呼ばれており、言葉を発するときに同じ音を繰り返し言ったり、言葉が思うように出てこず間があいてしまったりする状態のことです。多くは自然に症状が改善しますが、成人になっても続く方もいます。うまく話せず周りから笑われることもあり、話すことを苦痛に感じてしまう方が多いでしょう。
発達障害はその人の特性であり病気ではありません。生まれ持った特性のため、発達障害そのものを完治させることは困難です。そのため、基本的には対症療法を行っていくことになります。
どのような症状があるのかによって、使われる薬はさまざまです。症状に合わせて中枢神経刺激薬や抗精神病薬、非定型抗精神病薬や抗うつ薬(SSRI)、抗不安薬などが用いられます。
発達障害は薬で症状を改善することもできますが、まずは発達障害でも生活しやすい環境を整えることが大切です。忘れ物をしやすいのなら玄関にチェックリストを置き、片付けが苦手なら収納箱に何を入れるのかイラストや写真を貼ってわかりやすくするなど工夫をしましょう。
また、発達障害の子どもに対して親が怒りをぶつけないことも重要です。頻繁に怒られると、子どもは次第に自信をなくし、かえって症状が悪化することがあります。できたことを褒めるように心がけ、子どもと親がペアになって過ごしやすい環境を作りましょう。
発達障害がある場合、ご本人が医療機関の受診に非積極的だったり、受診を嫌がったりすることがあります。しかし、適切な治療や介入を行わなければ本人はつらい思いを続けることになるため、早めの治療が肝心です。どうしても受診が難しい場合は、在宅医療を検討してみてはいかがでしょうか。医師が自宅を訪問して診察を行うため、外に出ることなく適切な治療を受けられます。
本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。