医療法人社団 心清会
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ASD(自閉症スペクトラム症・アスペルガー症候群)

ASD(自閉症スペクトラム症・アスペルガー症候群)とは

ASDとは、人とコミュニケーションをする際に言葉や視線、表情や身振りなどでやりとりを行うことが苦手だったり相手の気持ちを読み取ることが難しかったりする特性のことです。発達障害の一つとして知られています。これまでは自閉症やアスペルガー症候群などの名前でそれぞれ呼ばれていましたが、現在はASD(自閉スペクトラム症)と呼ぶことが多いでしょう。

ASDは幼少期から症状が現れますが、親の育て方や周囲の環境が発症の原因となるわけではありません。ASDの多くは遺伝的な要因で生まれつき起こる脳機能障害が原因だと言われています。このほか、胎内環境や周産期に起こるトラブルなども関係しているようです。

ASDの方は、日本人の約100人に1人の割合で見られます。女性よりも男性で多く、男性は女性の4倍発症しやすいことが特徴です。

ASD(自閉症スペクトラム症・アスペルガー症候群)の症状

ASDの症状としては、おもに次のようなものが見られます。

ASDの多くは、3歳頃までに診断がつきます。視線が合わなかったり親の後追いをしなかったりすることに疑問を抱き、1歳半検診や3歳児検診で指摘されることが多いのです。親が微笑みかけても無表情のままだったり、言葉の発達が遅かったりなどの症状も見られます。

「周りの子と明らかに何か違う」と親が少しずつ気づき始め幼少期のうちに診断を受けることが多いのですが、知的能力障害がなく言葉の発達がスムーズに進んでいる場合は小学校に入ってからや成人になってからASDだと判明するケースも少なくありません。

ASDの症状としては上記のものが代表的ですが、人によってどのような症状の現れ方をするのかが異なります。なかには言葉を流暢に話せる方もいるのです。日常生活に支障が出ないほどしっかり話せる方もいます。

しかし、話すことはできても相手の表情を読み取ったり言葉のニュアンスを感じ取ったりするのは苦手という方が珍しくありません。ある一つのことに強い興味を示し、その分野で突出した才能を見せる方もいます。

ASD(自閉症スペクトラム症・アスペルガー症候群)の治療

ASDは生まれ持った特性のため、とくに治療方法は存在しません。ただし、いくつかの方法によって生活をしやすくしたり症状を抑えたりすることができます。

〈環境調整〉

ASDの方でも生活がしやすい環境を整えましょう。苦手な状況を減らしてあげることが大切です。守るべきルールがある場合は紙に書いてすぐ分かるようにし、伝えたいポイントははっきりと伝えたり何度も繰り返して言ったりなど工夫を行います。本人が苦手だと感じる環境を少しでも減らすことで、ASD特有の症状を出にくくしてあげるのです。

〈心理療法〉

ASDの症状を改善する方法として、心理療法も効果があります。代表的なのが、認知行動療法です。自分の考え方のくせや行動に着目し、思考や行動パターンを理解することで認知を調整していきます。これにより、普段の生活で感じるストレスを緩和することが可能です。

〈薬物療法〉

ASDを根本的に治す薬はありませんが、コミュニケーション障害や一定のものに強いこだわりを見せる症状などは薬で抑えることができます。よく使われるのが、非定型抗精神病薬や抗うつ薬の一つであるSSRIと呼ばれる薬です。このほか、漢方薬を使ってイライラや落ち着きのなさ、興奮や神経過敏などの症状を抑えることもあります。

ASDと併存しやすい病気や障害

ASDと同時に発症しやすい発達障害には、次のものがあります。

〈ADHD〉

注意力が散漫で気が散りやすく、同じミスを繰り返すなどの症状が見られるものです。順番を待つことが苦手だったり、落ち着きがなく授業中に歩き回ったりなどもよく見られます。

〈限局性学習症〉

読み書きや計算に関する発達障害です。文字を読むのが苦手だったり、正しく文字を書けなかったりします。計算がうまくできず図形やグラフが理解できない方もいます。

〈発達性協調運動症〉

運動発達の遅れ、箸やはさみが使えないなどの症状が見られる障害です。寝返りやハイハイ、歩くなどの発達に遅れが見られることで気づかれることが多いでしょう。

必要な人に、必要な医療を

ASDをもっていても日常生活を送ることができる方もいます。しかし、人によっては外に出ることに苦手意識をもってしまう方もいるものです。そのため、受診したくても本人がそれを拒み、適切な介入ができないことがあります。ASDの方は病院での待ち時間、自宅とは違う光や音に敏感に反応して嫌悪感を示すことがあるのです。しかし、このような状況でも受診を諦める必要はありません。どうしても外出が難しい場合は在宅医療を検討してみてはいかがでしょうか。医師が自宅を訪れてくれるため、外出が苦手な方でも安心して診察を受けられます。

本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。

医療法人社団心清会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。