医療法人社団 心清会
精神科・心療内科・内科・訪問診療

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは

PTSDとは、トラウマになるほどつらい経験をした後、その出来事を再体験したり悪夢を見たりなど日常生活に支障をきたす症状が出る反応のことです。

地震や火事などの災害を経験したり、事故現場に遭遇したりすると、人は強いストレスを感じます。通常は一時的なストレスで済むのですが、時にそのストレスが長引き精神的な影響をもたらしてしまうのです。戦闘や性的暴行、自然災害や人災などがPTSDの原因となりやすいことで知られています。

自分自身がなんらかの強いストレスを受けたときだけでなく、周囲の人がケガをしたり死の恐怖にさらされているのを目撃したりした場合にもPTSDを発症するケースがあることが特徴です。

同じストレスを受けてもPTSDを発症する方もいれば、発症しない方もいます。なぜこのように個人差があるのかについては、まだはっきりとした理由が分かっていません。

PTSDが慢性化すると、症状が改善しにくくなることもあるため、なるべく早期に治療を開始することが大切です。ただし、PTSDを発症した方のうち、50%以上の方が3か月以内に自然と症状が回復していくと言われています。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状

PTSDでは、おもに次の4つの症状が見られます。

〈侵入症状(再体験症状)〉

強いストレスを感じたときの恐怖や無力感を思い出し、あたかもまた当時の状態を今経験しているかのような状態に陥ります。当時の出来事を思い出すだけでなく、同じ状況を再体験しているような状況になるため、強い苦痛を伴うことが多いでしょう。

〈回避・麻痺症状〉

PTSDになる原因となった出来事を避けるようになります。たとえば、暴力を受けた公園に近づかなくなったり、加害者と似たような特徴をもつ人を避けたりするようになるのです。また、強いストレスを受ける原因となった記憶を忘れてしまったり、まるで人ごとのように感じたりすることもあります。

〈認知と気分の陰性変化〉

物事に対して過剰に否定的な考えになったり、興味や関心を失ったりするのもよく見られる症状の一つです。いろいろなことに興味や関心を失うため、何をしても心から楽しむことができません。孤立感を覚えたり、幸せや優しさなどの感情を失ってしまったりすることもあります。

〈過覚醒症状〉

過覚醒とは、ストレスから解放されても体が緊張した状態が続くことです。常に気持ちが張り詰めた状態が続き、驚いたり怒りっぽくなったりします。

PTSDを早期に発見するポイント

PTSDは、強いストレスを受けた後に発症します。ストレスを受けた後、生活に支障が出るほどの症状が1か月以上続く場合は、PTSDを疑って医療機関を早めに受診しましょう。自然と症状が落ち着いてくる方もいますが、適切な治療を行わなければ1年以上経っても症状が改善しないとも言われています。

きちんとした治療を早期に受けて症状の改善を目指すためにも、「仕方がない」と諦めずにPTSDかもしれないという病識をもって治療を受けることが大切です。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療

PTSDの治療では、おもに心理療法と環境調整、薬物療法が行われます。

〈心理療法〉

心理療法は、PTSDを治療する代表的な方法です。とくに呼吸やリラクゼーションによってストレスを管理していく方法が重要視されています。また、曝露療法もPTSDを改善するのに有効です。

あえて過去の記憶を思い出し、トラウマとなっている状況に身を置きます。そうすることで、少しずつストレスに耐性をつけていきPTSDの症状が出ないようにしていくのです。ストレスへの暴露を繰り返すことで、過去のトラウマとなっている恐怖を「恐れるほどのものではない」と認識できるようになれば、少しずつ症状が落ち着いてきます。

〈環境調整〉

強いストレスを感じる原因となったものに触れないようにします。虐待を受けている場合は、虐待主から離れましょう。ストーカー被害があるときは引っ越しをします。トラウマとなっているものを根本的に取り除くことで、症状の改善を目指します。

〈薬物療法〉

薬物療法では、抗うつ薬が用いられることが一般的です。うつ病を発症しているかどうかにかかわらず、SSRIやSNRIなどの抗うつ薬が使われます。SSRIやSNRIには不安感や恐怖感をやわらげる働きがあり、PTSDの再発予防にも効果的です。このほか、非定型向精神薬が用いられることもあります。こちらは、妄想やフラッシュバックなどの症状を抑えるのに有効です。

PTSDを発症した人への対応

PTSDは、家族や友人、パートナーなどのサポートが必要不可欠です。もしPTSDを発症した方が周りにいたら、まずは病気について正しく理解をしてあげましょう。そして、本人の悩みをしっかりと聞き、どれほどストレスを抱えているのか、つらい思いをしているのかを受け止めてあげます。

「過去のことだから忘れようよ」「昔のことだから今は大丈夫だよ」という声掛けは一見すると良いことのように見えますが、本人にとっては気持ちを否定されることになるため逆効果です。症状が出てしまうのは仕方のないことだから、少しずつ治していこうという気持ちを本人と周りの方がもって一緒に前に進むことが重要になります。

必要な人に、必要な医療を

PTSDを発症すると、外出することがつらいと感じることもあるでしょう。頑張って外に出てみてもいろいろな不安に襲われてしまいすぐに家に帰ってしまったり、決まった時間しか外出できなかったりなどの悩みを抱えている方もいるかと思います。なかには医療機関に足を運ぶのも勇気がいると感じている方がいるのではないでしょうか。そのような方は、在宅医療を検討してみるのをおすすめします。在宅医療を利用すれば、無理に外に出なくても自宅にいながら必要な治療を受けられるのです。

本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。

医療法人社団心清会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。