てんかんとは、脳の神経細胞が異常な電気活動を起こすことでてんかん発作を起こす病気のことです。電気がないと家電製品が動かないのと同じで、私たち人間も電気的流れが発生することで体を動かすことができます。
大脳の神経細胞であるニューロンは、規則正しいリズムで電気活動を行っていることが特徴です。通常は規則的な電気活動を行っていますが、てんかんの方では、リズムが突然崩れて異常な電気活動が発生してしまいます。そのため、運動神経や感覚神経、意識などが異常な動きを見せ、てんかんの症状が出るのです。
100人に1人はてんかんがあると言われています。数回程度しか発作が起きない軽度の方を含めると、日本人の5%はてんかん持ちです。意外と多くの方がてんかんに悩まされています。てんかんが起こる原因はさまざまです。
検査を行っても原因が分からないものを特発性てんかん、なんらかの原因によって起こっているものを症候性てんかんと言います。特発性てんかんは、出生時に仮死状態や低酸素になったり、脳炎や髄膜炎、脳出血や脳梗塞を起こしたりすることが原因です。
てんかんを発症するのは3歳以下の子どもが多く、患者の80%は18歳より以前に発症すると言われています。しかし、高齢化が進んだことにより、脳梗塞や脳出血などが原因でてんかんになる方も増えてきました。
てんかんが遺伝するかどうかについては現在も研究が進められていますが、明確な遺伝形式は今のところ見つかっていません。ただし、親がてんかんをもっている場合は、そうでない場合と比べて子どももてんかんを発症する確率は2~3倍高くなります。
てんかんの症状は、脳のどの部分に異常が出ているのかで異なります。一般的な症状は次の通りです。
てんかん患者が交通事故を起こしたことが時々ニュースで報告されることもあり、てんかん発作が起きると意識を失うというイメージがあるかもしれません。しかし、意識を失わないてんかん発作もあります。人によって現れる症状が異なるため、症状に応じて適切な治療を行うことが大切です。
てんかん発作には、大きくわけて「全般発作」と「部分発作」があります。全般発作は、てんかん発作が始まると意識がなくなり、脳の大部分または全体に興奮が起こるものです。
部分発作は、脳のある部分から発作が始まり、人によって発作の出方が異なります。部分発作のうち、意識が発作中に保たれているものを単純部分発作、意識がなくなるものを複雑部分発作と呼びます。
てんかんの治療方法には、大きくわけて「薬物療法」「外科治療」「迷走神経刺激療法」「食事療法」の4つがあります。
てんかん発作を抑える治療としては、薬物療法を行うことが基本です。抗てんかん薬を使い、脳の神経細胞の異常な電気的興奮を抑えたり、異常な電気的興奮がほかの神経細胞に伝わらないようにしたりします。抗てんかん薬には多くの種類があるため、てんかんの種類や年齢などによってその人に合った薬を選択することが大切です。
1種類の抗てんかん薬で発作が治まることもありますが、効果が不十分な場合はいくつか組み合わせて服用することもあります。
薬物療法を行っても十分にてんかん発作を抑えられない場合は、外科治療が行われるケースもあります。脳のどこで発作が起きているのかが明らかになっており、その部分を取り除いても体に影響がないと判断されるなど、一定の条件をクリアすると外科治療も対象です。手術が可能かどうかは医師が判断しますので、まずは相談してみてください。
迷走神経に電極を置き、継続的に刺激を送る治療法です。てんかんそのものを治す治療ではなく、発作が起こる頻度を少しでも少なくするための治療として行われています。治療を2年継続すると、約50%の患者で発作が起きる回数を半分にすることが可能です
抗てんかん薬を使っても十分な効果が見られない場合に食事療法が検討されます。「ケトン食事法」と呼ばれるものが代表的です。脂質が多く炭水化物が少ない食事を行うことで、ケトン体を体内で生成させます。ミオクロニー発作や脱力発作などを抑制したり、精神面の発達を改善したりする効果が期待されている治療法です。
てんかん発作は、いつ起こるか誰にも分かりません。そのため、発作が起こるのが怖くて外出できない方もいます。外出ができないため、医療機関を受診するのにも勇気がいるという方もいるのではないでしょうか。
ほかの病気があるために受診が難しい方もいるでしょう。しかし、てんかんは適切な治療を受ければ発作を抑えることができます。発作に怯えずに毎日を過ごすためにも、受診が難しい方は在宅医療の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。