医療法人社団 心清会
精神科・心療内科・内科・訪問診療

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群とは、腸に異常がないにもかかわらず慢性的な下痢や便秘が続く症状のことです。IBS(Irritable Bowel Syndrome)とも呼ばれています。過敏性腸症候群では、下痢や便秘の症状が1か月ほど続いていても、検査で何も異常が見つかることがありません。腸に炎症やポリープなどがないのに、症状が出てしまうのです。

慢性的に症状が続くことが多く、日常生活に支障が出てしまうこともあります。過敏性腸症候群が起こる原因について、はっきりとは分かっていません。いろいろな説がありますが、自律神経のバランスが乱れることで腸の蠕動運動がきちんと働かなくなり、下痢や便秘をしやすくなるのではと考えられています。

自律神経とは、交感神経と副交感神経のことです。この2つの神経がバランスよく働くことで、体はさまざまな機能を保っています。しかし、どちらかが働きすぎたり、逆に働きが衰えすぎたりすると、下痢や便秘などの症状が出てしまうのです。

過敏性腸症候群の方は、現代社会で急増していると言われています。「いつ下痢をするか分からない」という不安から外出が難しくなる方もいるため、過敏性腸症候群はできるだけ早く適切な治療を行うことが大切です。日頃の生活にも支障をきたす病気のため、下痢や便秘が1~2週間ほど続いたら、念のため医療機関で診てもらうようにしましょう。

過敏性腸症候群の症状

過敏性腸症候群には、大きくわけて次の3つの型があります。

下痢型は、頻繁に下痢を繰り返す型です。「家を出ようとするとお腹が痛くなる」「学校で何度もトイレに行かなくてはならず、授業に集中できない」など、生活に支障をきたすことが少なくありません。いつ下痢になるか分からないという恐怖心から、外出を控えるようになる方もいます。

便秘型は、便秘を繰り返す方のことです。コロコロとした便しか出なかったり、強くいきまないと排便できなかったりといった症状が続きます。排便に時間がかかることにストレスを覚えたり、便が硬いために痔になったりすることもあるでしょう。

混合型では、下痢と便秘を繰り返します。下痢をする期間が続いたと思ったら便秘になる、というのを何度も繰り返すため、患者さんは強いストレスを感じます。いわゆる「お腹が弱い」という方は、過敏性腸症候群である可能性があるため、便通が気になる場合は医療機関を受診して検査をしてもらいましょう。

便通異常によるストレスを抱えた生活を続けていると、そのストレスが原因で過敏性腸症候群を悪化させてしまうことがあります。悪循環を避けるためにも、早めの治療が大切です。

過敏性腸症候群の治療

過敏性腸症候群の治療法には、おもに「薬物療法」と「心理療法」、「食習慣や生活習慣の改善」の3つがあります。

〈薬物療法〉

あります。薬物療法を行う場合は、過敏性腸症候群の型に合わせて薬を使うことが一般的です。下痢型の場合には、腸管内の水分を調節して下痢を抑制する薬や腸管運動が過剰になるのを抑制する薬などを使用します。便秘型の場合は、腸管内に水分を集めて便を柔らかくする薬や下剤などが使われることが多いでしょう。

混合型のように下痢と便秘を繰り返す場合は、下痢のときは腸管内の水分を吸収し、便秘のときは便に水分を含ませて容積を増やし排便しやすくする薬などが使われます。

過敏性腸症候群の治療薬にはこのほかにもいくつか種類があるため、どのようなときにどういった症状が出やすいのかに合わせて薬を選択することが大切です。うまく自分に合う治療薬を見つけられれば、過敏性腸症候群の症状は改善していきます。

〈心理療法〉

ストレスが原因で過敏性腸症候群になっていることがあります。心理療法は、ストレスや不安を感じやすい物事の捉え方や考え方をしていることに気づき、これらを修正していく治療法です。不安が強い場合には、抗不安薬が使われる場合もあります。

〈食習慣や生活習慣の改善〉

過敏性腸症候群の患者さんのなかには、特定の食品を摂ると症状が悪化するという方がいます。症状の悪化につながる食品の摂取は控えて、暴飲暴食をしないように気をつけましょう。

下痢型の方は辛いものやカフェイン、アルコールなど胃腸に刺激を与えるものは控えるようにしてください。脂っこい食事も胃腸に負担をかけやすいので避けましょう。便秘型の方は、食物繊維の多い食品を多く摂ります。下痢型か便秘型かにかかわず、適度な運動を行うことも大切です。運動をするとストレス解消につながるため、症状の改善につながります。

必要な人に、必要な医療を

過敏性腸症候群は、普通の生活を送ることが困難になることもある病気です。腸に異常は見つからないものの、下痢や便秘などの症状が日常的に起こるため、症状に悩みながら毎日を過ごしている方が多くいます。「治療をしたいけど通院するのが難しい」「外出する勇気がない」という方は、在宅医療を検討してみてはいかがでしょうか。

本人が医療機関を受診することが難しい場合は、まずは地域相談支援センターや保健所といった公的機関に相談することで、専門機関につながり、個々のケースに合った援助や医療の提供を受けることが可能です。

医療法人社団心清会では、ご本人およびご家族が困っていながらも通院が困難な方を対象に、精神科医療を基盤とした在宅医療を行っています。